時間の使い方は心地よさを軸に選ぶ

「時間の使い方は自分にとっての『心地よさ』を基準に決めましょう。」

そう言われると、抵抗感や反発心を覚える方もいらっしゃるかもしれません。それは、自分にムチを打って頑張ることが当たり前になっているからです。

これまでと同じ頑張り方では心身が疲弊してしまうのではないか。そんな不安が少しでもあるのであれば、洋服やインテリアを選ぶように、好みやフィット感・心地よさを軸に時間の使い方を選ぶ「タイムコーディネート」という考え方を取り入れてみてください。

タイムコーディネートでは、
・心地よさという自分の「原点」
・こうありたいと願う「理想」
・目の前に広がる「現実」という3つの視点で時間の使い方を見直していきます。

今回は、3つの視点のうち、心地よさという自分の「原点」について、詳しく解説します。

タイムコーディネートのベースとなる考え方やタイムマネジメントの違いを知りたい方はこちらもあわせて読んでいただけると、より理解が深まるはずです。

目次

自分にとっての心地よさを知る3つのポイント

「自分らしい時間の使い方は?」そう聞かれたときに、すぐに答えられるでしょうか。

時間の使い方は生き方そのものです。時間の使い方を考えるということは、自分の生き方を考えることだという意識を持ちましょう。その判断基準となるのが、「心地よさ」です。とはいえ、自分にとっての心地よさがわからない、という方も多くいらっしゃいます。

ここでは、自分にとっての心地よさを知るための3つのポイントをご紹介します。

心地よさは思い込みや憧れの奥にある

担っている役割や立場から、「こうあるべき」「こうしなければ」といった思い込みが根深くある方も少なくありません。また、周りの人を見て、「あぁ、なりたい」と思うこともあるでしょう。けれど、思い込みや憧れの奥にある自分の本心に辿りつくまで、「自分は本当に心地よく感じるのか」と自分に何度も問いかけましょう。

徹底的に自分にとっての心地よさに向き合ってみてください。

心地よさは自分軸で考える

自分の時間の使い方、ひいては自分の生き方を考えるとき、主語は「自分」になっていますか。家族のサポートや仕事に多くの時間を割いていると、ついつい自分以外の人やものを自分の人生の真ん中に据えてしまいがちです。時間の使い方・生き方は、必ず自分を軸として考えましょう。

自分軸で考える。これは、言い換えると自分の人生に責任を持つということです。自分軸で考えないのは、自分の人生に対して責任を放棄することになってしまいます。優しさや責任感から周りを優先してきた人こそ、「私はどうしたいのか」「私はどうありたいのか」といったように、自分を主語にして考えることを意識しましょう。

心地よさは尊重し合える

自分軸で考えることを「自分勝手」と捉える方も多くいらっしゃいます。自分勝手だと捉える理由の一つとして、周りの人のことより自分を優先しているように感じることが挙げられるでしょう。

私たちは一人で生きているわけではなく、家族やパートナー、仕事仲間や友人といった多くの人と関わりながら生きています。そして、大切な人たちと自分の心地よさの違いは、どうしても生じるものです。ただし、大切な人と自分との心地よさの違いを過度に怖れる必要はありません。お互いの本心を見せ合った上で、違いを調整しましょう。一方が我慢するのではなく、お互いの「心地よさ」を尊重し合うことは可能です。

自分にとっての心地よさを明確にすることは、大切な人との良好な関係を維持する上でも大切です。

心地よさはバランスのとれた時間の使い方から

私たちは多くの役割を抱えています。限られた24時間を、その多くの役割でどう振り分けていくのかを決める必要があります。そのバランスを自分にとって心地よい状態に整えていくことも大事です。

自分の役割と時間の使い方のバランスは3つのステップで整えていきます。

STEP1:睡眠時間を確保する

時間の使い方を考える上で、一番大事にしたいのは睡眠時間です。まずは睡眠時間を確保しましょう。24時間から睡眠時間をひいた上で、残った時間をそれぞれの役割でどのくらい使いたいのかを考えます。

役割ややりたいことが多くあると、ついつい睡眠時間を削ってなんとかしようとしがちです。けれど、そのやり方では長くは続きません。また、睡眠不足ではパフォーマンスが落ちてしまい、得たい結果は得にくくなってしまいます。

心地よさは心身ともに健やかな状態であるからこそ得られるものです。睡眠時間を減らすことで無理に調整するやり方はもう終わりにしましょう。

STEP2:時間の使い方のバランスを可視化する

まずは自分の担う役割を5つ程度に分けてみましょう。そして、24時間から睡眠時間を引いた残りの時間を5つの役割でどれくらい使っているのかを書き出します。感覚的だった役割による時間の使い方の偏りをよりリアルに実感することができるはずです。

使っている時間がわからないときには、まずはその役割で具体的に何をしているのか、どんな状態なのかを書き出してみてみましょう。実際にログを取って、使っている時間を正確に把握してみるのも多くの発見があるはずです。

ただし、正確さを求め過ぎないように注意が必要です。知りたいのは、どんなバランスで時間を使うことが自分の望む状態になるのか、です。数値化は状態を知る方法のひとつです。ざっくりでよいので、ハードルを下げて、まずは可視化に挑戦してみましょう。

STEP3:理想と現実のギャップを把握する

私たちは多くの役割を担っています。つまり、仕事だけ、家事だけ、といったように一部分だけを取り出してタイムマネジメントをしても、人生の満足度は高まりにくいのです。だからこそ、役割という視点から時間全体の使い方のバランスを見直す必要があるのです。

現実を可視化できると、理想とのギャップを把握しやすくなります。人はギャップを自覚すると、埋めようとする習性があります。まずは、具体的に理想と現実のギャップを把握することが、役割バランスを整えるうえで、非常に重要です。

また、現在の理想だけではなく、少し先の未来の役割バランスもイメージしてみましょう。そうすることで、今の役割バランスの意味を改めて感じられたり、今やっておくべきことが明確になったりもするはずです。自分の大切にしたいことや価値観の再確認にもなります。

タイムコーディネート手帳にはこの3ステップにスムーズに取り組める『5つの「私」役割シート』があります。ぜひ活用してみてください。

心地よさを時間の使い方から生き方へ繋ぐもの

自分が目指すものがわからず、目の前の目標をクリアすることだけに必死になっていると、いずれ燃え尽きてしまいます。そうならないためには、自分が何のために頑張るのか、人生で目指すものを明確にしておく必要があります。

自分はどんな人生を送りたいのか。後悔しない人生はどんな人生なのか。言葉にしてみましょう。

タイムコーディネートでは、自分の人生におけるVISION・MISSION・VALUEを言語化していきます。

VISION・MISSION・VALUEがあると、自分の目指す方向へ進みやすくなるだけではなく、迷ったときにも立ち返りやすくなります。言葉が自分へのエールとなり、指針となるのです。

VISION:どんな人生を送りたいのか

「幸せ」と聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか。家族が笑顔で囲む食卓を思い浮かべる人、大きな舞台で自分の実力を発揮しているシーンを思い浮かべる人など、人それぞれが思い描く「幸せ」があるはずです。

その「幸せ」には、
・家族の笑顔
・健康
・社会貢献
・チャレンジなど、欠かせない要素があります。

その要素がその人にとってのVISIONの素となるものです。まずは、自分にとって、幸せを構成している要素は何なのかを意識してみましょう。

そして、その要素を満たすためには、どんな社会であってほしいのかを考えます。目指す社会を言語化したものがVISIONとなります。

MISSION:どうしてそんな人生を送りたいのか

自分にとっての幸せを構成している要素がなぜ必要だと思ったのかを深掘りしてみましょう。

・心身ともに健康であることが自分らしく生きるための土台となるから
・一度きりの人生は自分の可能性をとことん追求したいから
といったように、理由を深掘りすると、自分の大切にしていることや価値観が明確になります。これがMISSIONに繋がります。

VALUE:どうやってそんな人生を送れるようにするのか

自分の幸せを構成している要素を実現するために、自分はどんなことをするのか、しないのか。それがVALUEとなります。

・栄養バランスの整った食事をする
・睡眠時間を削らない
・できるかどうかではなく、やりたいかどうかで決める
・1日15分は本を読む
といったように、自分の行動指針となるものを明確にしていいます。

自分にとっての幸せを構成している要素を起点に、深掘りしたり、肉付けしたりすることで、VISION・MISSION・VALUEが言語化できます。一度で完璧にする必要はありません。その都度、ブラッシュアップしていくつもりで、考えてみましょう。

VISION・MISSION・VALUEは、心地よさを「今」から「未来」に繋ぐ羅針盤となってくれます。

まとめ:心地よさを怖れず言葉にしていこう!

これまで周りを優先してきた人、無理をして頑張り続けてきた人にとって、自分にとっての心地よさを言葉にすることは難しく感じるかもしれません。

けれど、自分にとっての心地よさは自分にしかわかりません。自分の人生に責任を持つために、まずは自分にとっての心地よさを言葉にしていきましょう。

心地よさを具体化するために、
・役割という視点から理想の時間の使い方を考える
・人生の指針となるVISION・MISSION・VALUEを言葉にする
という2つの方法をご紹介しました。

自分にとっての心地よさを探求することは自分自身への理解を深めることになります。タイムコーディネートを実践するために、まずは原点を知るところからはじめましょう。

文:吉武 麻子
編集:長谷部 敦子

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